となり町戦争
発刊当初から気になりながら、文庫化を待っていた三崎亜記作品。
予想通り、となり町との戦争が開始されたにもかかわらず
目に見えた変化も無く過ぎていく日常。
そこに一通の『戦時特別偵察従事者の任命』という通知が届いたことから
傍観的だった戦争の一端に加担していく主人公。。。
ちょうど、もし世界の人口が100人だったら。。を思わせるような感覚があった。
マクロな視点からみると遠くはなれた場所で行われている戦争。
そんなものは非日常だし、現実味を帯びない。
それをウ~~~ンと縮小して、となり町通しで行われたとしたら。。。
それでも、従事者以外は、やはり非日常でしかない事実。
事務的に処理していく役場の事務吏員との絡みのなかで
公とは違う私的な感想を問いただしてみたり
憤然と、戦争の意義を問い、自分の町を守るために戦おうとする青年
ネット操作で情報を操り、一種のゲームとしてとらえる若者
海外生活からの帰国者で部隊で実際に戦闘を経験した上司
世界の人をを大きく分ければ戦争に対するスタンスも
このようになるかと思わせる配置加減で
どこかでじりじりするような、反戦感情を逆なでされるような感覚
ただ見えない戦争の中で、実感としてあるのが
自分の中に培われた感情と失われていった想い
それだけが本当のものだといわれているような気がする。
大義名分よりも、一人の人を愛した感情と
その思いが受け入れられなかったという事実のみが
戦争が本当にあったということを実感できる事実。
失くすことの多い戦争というものを単純に悪として
切り捨てることのできない複雑な世界をホンの少し垣間見た気がした。
それでも戦争を悪ととらえ、戦争に変えるほかの手立てを考えたいと思うのは
無駄なことではないと思うのだけれど
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